最高裁判所第三小法廷 昭和36(オ)697 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人梶谷丈夫、同梶谷玄の上告理由第一点について。
論旨は、要するに、訴外Dと被上告人間に本件手形割引契約が成立し、割引代金
として、三回にわたり合計一八〇万円がDに交付された旨の原審の認定ならびに被
上告人の訴外E銀行F支店に対する裏書が、Dのため、単に形式的に裏書人名義を
貸しただけのものであるとする上告人の主張は認め難い旨の原審の判断は、証拠の
取捨判断を誤り、かつ、経験則に違背して事実を認定したものであると非難する。
しかし、原判決挙示の証拠によれば、原審の右認定判断は是認できる。たとえ原
判示のとおり「控訴人とDとの割引契約において定められた割引代金が右の金百八
十万円であつたか或いはこれを超えるものであつたかは本件にあらわれたすべての
証拠によるも、これを確認し難い」としても、一方,「控訴人としては(中略)本
件手形により更に自己名義で前記銀行F支店から割引を受けその割引代金を以てD
に対する割引代金の支払にあてることとし、そのことにつきあらかじめ同銀行支店
及びDの諒解を得た」ことは原審が適法に確定したところであり、右の程度に代金
額を確定しうるときは、手形割引契約の成立を認定することになんら妨げないもの
とおもわれる。論旨は、畢竟、叙上に反する独自の見解に立ち、原審が適法にした
証拠の取捨判断および事実の認定を非難するにすぎず、採用できない。
同第二点について。
原判決事実摘示(二)(7)の上告人の抗弁に対し、原審は論旨冒頭摘録のごと
く判示してこれを排斥したものであるところ、仮りにDが被上告人から上告人主張
の額の割引残代金の交付を受けていないとしても、右原因関係の当事者でない上告
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人に対する手形金請求に対し、上告人がD対被上告人間の右法律関係を援用し、こ
れをもつて、被上告人に対抗することは許されないものと解すべく、このことは、
上告人がDに対しその主張のごとき抗弁をもつて対抗できる場合であると否とによ
り結論を異にすべきものではない旨の原審の判断は当裁判所も正当としてこれを是
認する。
なお、論旨中Dが被上告人に対し割引代金一部不交付の抗弁を有する範囲におい
て被上告人は本件手形につき固有の経済的利益を有しない者であるゆえ、上告人は
被上告人の前者たるDに対して有する抗弁をもつて被上告人に対抗しうる旨の主張
は、原審において主張判断を経ていない事項であるから、当審においてその当否を
審究すべきかぎりでない。所論はいずれも採用できない。
同第三点について。
原審の証拠関係に照らすと、被上告人は上告会社と訴外DおよびG株式会社の原
判示示談交渉に関係したことはなく、また、訴外Hのため原判示抵当権設定登記お
よび所有権移転請求権保全の仮登記がなされたことも被上告人の関知しなかつたこ
とである旨および原判示不動産を売却した際その代金中より六五万円をDが本件手
形の一部支払として南に交付した事実は認定できない旨の原審の認定判断は首肯で
きる。所論は証拠の取捨判断および事実認定に関する原審の専権行使を攻撃するも
のであり、採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 横 田 正 俊
裁判官 河 村 又 介
裁判官 垂 水 克 己
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裁判官 石 坂 修 一
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